そこには岩しかありませんでした。
そこに草原ができ、小さな種が落ちて、1本の小さな樹に育ったころ、小さなねずみの夫婦がその草原に住むようになりました。
小さなねずみの夫婦は、沢山の子供や孫たちに囲まれ、小さな樹の根元で永い眠りにつきました。
これは、その後の話。
小さな樹は大きな樹になりました
草原に小さな種から芽吹いた小さな樹は、長い時を過ごし、大きな樹になりました。
草原には、沢山の小さなねずみが住んでいました。
食べ物のたくさんある草原は、ねずみたちにとっては暮らしやすいところでした。
大きなねずみの男の子
ある日、小さなねずみの夫婦に、男の子が生まれました。
すくすくと元気に男の子は育っていきました。
でも、その男の子は、他の兄弟たちとはちょっと違っていたのです。
他にも、男の子と他のねずみたちは違ったところがあって…。
男の子のしっぽはなくて、体は大人のねずみたちより体が大きかったのです。
男の子は臆病で、虫を捕まえることができません。
「動くものは怖いんだもん。食べるなんてとんでもない。できないよ。」
男の子は草原の草や花や実ばかりを食べていました。
ねずみのお父さんやお母さんは「この子は無事に育つのだろうか?」といつも心配していました。
それでも病気をすることもなく、元気に育っていきました。
他のねずみと違っていたので、他の子たちと遊ぶことはなかったのですが、かといって、いじめられることもなかったので、大きなねずみの男の子はいつも一人で空を見たり、草原の中を駆け回り冒険したり、他のねずみの子たちがみんなで遊んでいるのを離れてみていたりして過ごしていました。
大きな樹と小さなねずみのお父さん
ある日、他のねずみの子たちを眺めていると、いつも元気な小さなねずみの女の子がいないことに気が付きました。
「どうしたのかな?いつも元気にしてるのに。鳥とか蛇とカニ食べられたりしてなければいいんだけど。」と男の子はちょっと心配していました。
数日後、大きなねずみの男の子が大きの樹の陰で空を見上げていると、大人のねずみが1匹、大きな樹を訪ねてきました。
それは小さなねずみの女の子のお父さんでした。
小さなねずみの女の子のお父さんは大きな樹に尋ねます。
「娘が病気なんだ。病気に効く薬になる薬草が生えているところを知らないか?」
大きな樹は答えます。
「薬草は遠くの崖に生えている。私に登ってみてごらん。てっぺんまで登らないと見えないよ。」
小さなねずみの女の子のお父さんは大きな樹によじ登っていきました。
そして、すぐに降りてくると、どこかへ急いで行ってしまいました。
大きなねずみの男の子は心配になりました。
大きな樹の言っていた「遠くの崖」というところに心当たりがあったからです。
一人で冒険に行った、あの崖に違いない。と大きなねずみの男の子は思いました。
その崖には、ねずみが大好物な大きな鳥がいるのです。
大きなねずみの男の子は小さなねずみの女の子のお父さんを追いかけることにしました。
コメント